1973|TRACK & FIELD
Nikeは1973年、「走る」だけでなく「競う」ための靴を作り始めていた
1973年のNikeを語るとき、多くの人はランニングシューズを思い浮かべます。
Moon Shoe。
Boston ’73。
Cortez。
しかし同じ時代のNikeは、ロードランナーだけを見ていたわけではありません。
トラック競技の世界にも入り始めていました。
スタートの瞬間。
加速。
コーナー。
ラストスパート。
わずかな差で勝敗が決まる陸上競技では、ランニングシューズとは異なる性能が求められます。
そこでNikeが送り出したのが、
Montreal XXI。
SOLEVAULT No.021が保存するのは、この初期Nikeスパイクの一足です。
まだNikeはスパイクメーカーではなかった
現在のNikeは陸上競技の世界で大きな存在です。
オリンピックでも世界選手権でもNikeのロゴを見ない大会はありません。
しかし1973年は違いました。
当時のNikeは、
陸上スパイクの世界では後発メーカーでした。
カタログ資料によれば、
Nikeは世界最高レベルのスパイクプレートを求め、
ドイツから特別に輸入したナイロン製プレートを採用していました。
この記述は重要です。
つまり当時のNikeは、
まだ自社技術だけで世界を席巻していたわけではない。
必要なら世界中から最良の技術を集める。
そういう実用主義の企業だったのです。
Montreal XXIという名前
Montreal XXIという名称は興味深い存在です。
1970年代のNikeには、
都市名を持つモデルが少なくありません。
Boston。
Marathon。
Montreal。
後年のNikeも都市名や大会名を用いたモデルを数多く生み出しますが、その流れはすでにこの時代から見られます。
Montrealという名前は、多くのランナーにとって世界レベルの競技を連想させるものでした。
Nikeは単なる商品名ではなく、
競技の世界そのものをブランドへ取り込もうとしていたのかもしれません。
軽さこそ最大の武器だった
Montreal XXIの説明文で最初に強調されるのは、
Extra Light
です。
とにかく軽い。
それがこのシューズの価値でした。
カタログによれば、
- Reverse Leather Upper
- Polyurethane Foam Tongue
- Unique Heel Padding
- Continuous Cushion Sole
を採用していました。
現代のランニングシューズのようなエアユニットもありません。
カーボンプレートもありません。
しかし1973年当時、
軽量化は最先端技術でした。
不要な重量を削り、
足への負担を減らし、
少しでも速く走る。
Montreal XXIは、その思想を体現しています。
スパイクプレートへのこだわり
カタログ本文で特に目立つのはスパイクプレートです。
Nikeは、
世界でもごく限られたメーカーしか作れない高品質プレートを採用したと説明しています。
さらに、
- 極めて軽量
- 優れた柔軟性
- ナイロン構造
を特徴として挙げています。
Montreal XXIでは、
交換式スパイクを装着するための
成形ナイロンプレート
が採用されていました。
これは単なる部品ではありません。
トラックシューズの性能そのものです。
当時のNikeは、
アッパーだけでなく足裏の技術にも力を入れていました。
「あらゆる路面」に対応するという発想
カタログには、
Montreal XXIが
Ideal for use on any surfaces
と紹介されています。
これは興味深い表現です。
1970年代は現在ほど競技環境が統一されていません。
トラックの素材も地域によって異なりました。
そのため、
一つの競技場だけではなく、
さまざまな環境へ対応する性能が求められていました。
Montreal XXIは、
単なる短距離専用スパイクというより、
汎用性を重視した競技用シューズだったと考えられます。
Canada Quick Sixとの関係
同じページには、
Canada Quick Sixも掲載されています。
両者は兄弟モデルのように見えますが、
役割は異なります。
Canada Quick Sixは、
ブルーカンガルーベロアを使用した超軽量モデルとして紹介されています。
一方Montreal XXIは、
よりバランス型の競技スパイクとして位置付けられていました。
つまりNikeはすでに、
競技者ごとの好みや用途に応じたラインアップを作り始めていたのです。
初期Nikeの技術力を示す一足
Montreal XXIは、
Moon Shoeのような伝説ではありません。
Boston ’73のようなマラソン勝利の象徴でもありません。
しかし、
1973年当時のNikeが
本気で陸上競技へ参入しようとしていた証拠
です。
ロードだけではない。
クロスカントリーだけでもない。
トラック競技でも勝ちたい。
Montreal XXIには、その意思が見えます。
WHY IT MATTERS|なぜ、この一足を残すのか
Nikeの歴史はランニングだけでできているわけではありません。
もしMoon Shoeだけを見れば、
Nikeはロードランニングの会社に見えます。
しかしMontreal XXIを見ると、
より広い姿が見えてきます。
トラック競技。
スパイク開発。
軽量化技術。
交換式スパイク。
Montreal XXIは、
Nikeが総合的な競技シューズメーカーへ成長していく過程を示しています。
SOLEVAULT VIEW
No.001|The Nike
No.002|Early Waffle Prototype
No.003|Moon Shoe
No.020|Boston ’73
そして、
No.021|Montreal XXI
ここでNikeの視線はロードからトラックへ広がります。
より速く。
より軽く。
より競技的に。
Montreal XXIは、
初期Nikeが「走るための靴」から
「勝つための靴」へ進化していく時代を示す資料です。
ARCHIVE DATA|アーカイブデータ
SOLEVAULT No.021
ARCHIVE NAME|収蔵名称: Montreal XXI
YEAR|年代: 1973
ROOM|分類: TRACK & FIELD
TYPE|用途: Track Spike
STATUS|製品状態: Production Model
UPPER|アッパー: Reverse Leather Upper
TONGUE|タン: Polyurethane Foam Tongue
HEEL|ヒール構造: Unique Heel Padding
SOLE|ソール: Continuous Cushion Sole
SPIKE PLATE|スパイクプレート: Molded Nylon Plate
SPIKES|スパイク数: Four Replaceable Spikes
SURFACE|対象路面: Track & Field Surfaces
PRIMARY FEATURE|主要特徴: Extra Lightweight Construction
SOURCE STATUS|資料確認状況: Confirmed by Period Nike Catalog Documentation
CURRENTLY CONFIRMED|現在確認できていること
Nike当時のカタログ資料により、Montreal XXIが超軽量競技用スパイクとして販売されていたことが確認できます。
また、Reverse Leather Upper、Polyurethane Foam Tongue、Unique Heel Padding、Continuous Cushion Sole、Molded Nylon Plate、4本交換式スパイクを採用していたことが記載されています。
さらに、あらゆる競技路面での使用を想定したモデルとして紹介されています。
CURRENTLY UNCONFIRMED|現在確認できていないこと
現時点で確認できる資料では、
- 正式品番
- 正確な製造数
- 全カラー展開
- 重量
- 製造工場
- 実際の競技使用記録
- 着用選手
- 現存個体数
については十分な一次資料が確認できていません。
したがってSOLEVAULTでは未確認事項として記録します。
PRIMARY SOURCES|主要資料
Nike Track & Field Footwear Catalog(1973)
Montreal XXI Product Description Page
Nike Contemporary Catalog Documentation
SOLEVAULT ARCHIVE NOTE
Montreal XXIは、初期Nikeのスパイク開発史を理解するうえで重要なモデルです。
現在確認できる資料は限定的ですが、1973年当時のNikeがトラック競技分野へ本格的に取り組んでいたことを示す一次資料として保存します。
有名だから残すのではない。
存在したことが確認できるから残す。
SOLEVAULT No.021|収蔵完了。

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