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SOLEVAULT No.001|The Nike(ザ・ナイキ)(1971)

1971|FOOTBALL

目次

Nike最初の一足は、ランニングシューズではなかった

Nikeの原点を尋ねれば、Cortezを思い浮かべる人もいるでしょう。

Waffle Trainerかもしれません。

しかしNike自身のDepartment of Nike Archivesが、1971年に小さなオレゴンの会社が販売した最初の一足として記録しているのは、そのどちらでもありません。

黒いアッパー。

白いソール。

芝の上で使うためのフットボールブーツ。

その名前は驚くほど単純でした。

The Nike。

販売価格は16.95ドル

そして、その側面には後に世界的なブランドシンボルとなる、まだ生まれたばかりのマークが付いていました。

Swoosh(スウッシュ)です。

Nike公式アーカイブは、現存するThe Nikeを最初にSwooshを付けたシューズとして紹介しています。

Nikeの歴史は、最初からランニングの名作だけで始まったわけではありません。

No.001は、フットボールブーツです。


1971年、まだNikeはBlue Ribbon Sportsだった

1971年当時、現在の巨大企業Nikeはまだ存在していませんでした。

Phil KnightとBill Bowermanが運営していたのは、

Blue Ribbon Sports(BRS)

という小さな会社です。

BRSは日本製ランニングシューズをアメリカで販売していました。

しかしNike公式アーカイブによれば、日本の供給元との契約が終わりに近づくなか、Knightは他社の商品だけに会社の未来を依存できないと考えるようになります。

必要だったのは、

自分たちのシューズ。

そして、

自分たちのブランドを識別するマーク。

でした。

The Nikeは単なる一商品の誕生ではありません。

BRSが「他社の商品を販売する会社」から、「自分たちの商品を持つ会社」へ進もうとしていた時代の証拠でもあります。


1971年2月、メキシコの工場へ発注

NikeのDepartment of Nike Archivesは、かなり具体的な記録を残しています。

1971年2月。

Phil Knightはメキシコの工場と契約し、

黒いアッパー+白いソールのサッカー用クリート

を生産しようとしました。

ここは日本語でNike史を記録するときに、注意したいポイントです。

Nike公式英語版には、

“black soccer cleat with a white sole”

とあります。

英国版では、

“black football boot with a white sole”

です。

したがってSOLEVAULTでは、The Nikeを現代日本語でいうサッカー/フットボール用ブーツとして分類します。

「Football」という英単語だけから、アメリカンフットボール用と断定しません。

こうした原資料の言葉の違いも、可能な限りそのまま残します。


The Nikeには、まだSwooshがなかった

正確には、シューズを作る計画が先でした。

そこへ新しいマークが必要になりました。

Onitsuka Tigerの商品とは違う。

これは自分たちの商品である。

それを一目で分からせる印が必要だったのです。

そこでPhil Knightが依頼したのが、Portland State Universityでデザインを学んでいた、

Carolyn Davidson(キャロライン・デビッドソン)

でした。

二人の関係はSwooshの依頼から始まったわけではありません。

Nike公式によれば、その約2年前、KnightはDavidsonが油絵の授業料を払えないと話しているのを偶然耳にし、時給2ドルで自分の仕事を手伝わないかと声をかけました。

Davidsonはその後、広告、パンフレット、カタログなどを制作します。

そして1971年。

Knightは彼女に、シューズ側面へ入れる新しいストライプのデザインを依頼しました。


約6案から選ばれた「まだSwooshではないSwoosh」

Davidsonは、およそ6つの案を制作しました。

オレゴン州Tigardのオフィスで、Knightらがそれらを検討します。

そこにはNike最初のフルタイム社員Jeff Johnsonもいました。

最終的に選ばれたのが、現在のSwooshにつながる湾曲したチェックマーク状のデザインです。

Davidsonは、この形に**動き(motion)**を感じていました。

ところがKnightは、最初から熱狂したわけではありません。

Nike公式アーカイブには、彼がそのデザインを気に入ったとは言えない反応を示しながらも、いずれ馴染むだろうと判断した経緯が残されています。

さらに面白いのは、この時点ではまだ、

「Swoosh」と呼ばれていなかった

ことです。

単なるシューズ側面のストライプでした。

製造開始に間に合わせるため、そのデザインは急いでメキシコへ送られます。

DavidsonがKnightへ送った請求額は、

35ドル。

世界的ブランドマークの出発点としては、あまりにも小さな金額でした。


最初のSwooshは、今のSwooshと同じではなかった

ここも重要です。

現在のNike製品を見れば、Swooshは厳格に管理されたブランドロゴに見えます。

しかし最初からそうだったわけではありません。

Nike公式アーカイブによると、初期のSwooshはモデルによって形がかなり異なっていました。

幅が広いもの。

細く締まったもの。

シューズの形状に合わせて角度を変えたもの。

工場側も、それぞれ可能な方法でSwooshを縫い付けていました。

つまりThe Nikeの側面にあるマークを見ることは、

完成されたNikeロゴを見ることではありません。

後に世界共通のブランド記号となるデザインが、まだ製品と一緒に形を探していた時代を見ることです。


16.95ドルの「Nike最初の商品」

The Nikeの当時価格については、かなり強い資料があります。

Nike Department of Nike Archives自身が、

$16.95

と明記しています。

SOLEVAULTでは、当時価格が確認できるモデルについては必ず保存します。

現在の中古価格やオークション価格ではありません。

そのシューズが当時いくらの商品だったのか。

これも一足の歴史を理解する重要なデータです。


しかし、Nike最初の一足は成功作ではなかった

The Nikeの物語を面白くしているのはここです。

Nike最初の一足は、

最初から完成された名作ではありませんでした。

後年伝えられた初期BRS/Nike関係者Bob Woodellの証言によれば、The Nikeは1971年夏から初秋には売れたものの、気温が下がると問題が発生しました。

ソールのコンパウンドが寒冷環境に適しておらず、北部の寒い夜に使用すると硬化し、ひび割れることがあったとされています。

ここは資料の扱いも区別します。

The Nikeの名称、1971年、16.95ドル、メキシコ工場への発注、Swooshとの関係はNike Department of Nike Archivesによる一次性の高い公式資料で確認できます。

一方、寒冷地での具体的な破損状況について今回確認できた記述は、Bob Woodellの証言を引用した後年の二次資料です。

したがってSOLEVAULTでは、両者を同じ確度として扱いません。


失敗した一足から、Nikeは別の競技へ進んでいく

The Nikeが長く主力商品として残ることはありませんでした。

しかしNikeというブランドそのものは消えませんでした。

むしろ、このあとランニングを中心に新しいシューズが次々と生まれていきます。

1971年にはBill Bowermanによる初期ワッフル実験も進行していました。

1972年にはMoon Shoe。

そしてバスケットボール、テニス、トラック&フィールドなどへNikeのSwooshは広がっていきます。

The Nikeそのものは成功しなくても、

The Nikeに付けられたマークは生き残った。

これが、この一足の歴史的な面白さです。


50年後、Nike自身がThe Nikeを復刻した

そして2021年。

NikeはThe Nike誕生50周年の時期に、

The Nike 1971

を復刻しました。

Nike公式の商品ページでも、

1971年、最初のSwooshがフットボールブーツに登場した

という歴史を前面に出しています。

復刻版のスタイルコードは、

DC9964-010。

表示カラーは、

Black / Black / Black / White。

製造国は、

Italy(イタリア)。

Nike公式商品情報では、プレミアムレザーのアッパー、合成素材のアウトソール、円錐形スタッドなども確認できます。

ただし、ここには非常に重要な注意があります。


2021年復刻版の仕様を、1971年オリジナルへ移してはいけない

これはSOLEVAULT全体の資料原則にします。

Nike公式の2021年商品ページに、

「Premium Leather」

「Synthetic Outsole」

「Conical Studs」

と書かれているからといって、それをそのまま1971年オリジナルThe Nikeの確定仕様として記載することはしません。

復刻モデルはオリジナルを参考にしています。

しかし、

復刻版の仕様 ≠ オリジナルの一次資料

です。

オリジナルについて確認できた事実と、2021年復刻版について確認できた事実は分離して保存します。

これを混ぜると、50年後の仕様から1971年の靴を逆算することになってしまいます。

SOLEVAULTでは、それをしません。


WHY IT MATTERS|なぜ、この一足を残すのか

The Nikeは、Nike史上最高性能のシューズではありません。

大ヒット商品でもありません。

Airもない。

有名なシグネチャーアスリートもいない。

そして製品として問題も抱えていました。

それでも、Nikeの歴史を一足ずつ並べるなら、この靴を飛ばすことはできません。

1971年。

Blue Ribbon Sportsが他社の商品を販売するだけではなく、自分たちの商品を作ろうとした。

メキシコの工場へシューズを発注した。

そのシューズを区別するため、新しいマークを作った。

35ドルで制作されたストライプが、その側面に入った。

そして16.95ドルで販売された。

その小さな出来事の先に、後のNikeがあります。


SOLEVAULT VIEW

現在からNikeの歴史を見ると、どうしても成功したモデルばかりが残ります。

Cortez。

Waffle Trainer。

Air Force 1。

Air Jordan。

Air Max。

しかし、それだけを並べるとNikeの歴史は、

最初から成功することが決まっていたブランドの物語

に見えてしまいます。

実際は違います。

Nike最初の一足から、すでに失敗がありました。

寒さに弱かったと伝えられるソール。

まだ名前すらなかったSwoosh。

小さな会社。

35ドルのデザイン料。

16.95ドルのフットボールブーツ。

そこから始まっています。

だからSOLEVAULT No.001はCortezではありません。

Waffle Trainerでもありません。

The Nike。

有名だから残すのではない。

存在したから、記録する。

そして成功作だけでなく、失敗も、試作品も、短命だったモデルも残す。

それがSOLEVAULTです。


ARCHIVE DATA|アーカイブデータ

SOLEVAULT No.001

MODEL|モデル名: The Nike(ザ・ナイキ)
YEAR|登場年: 1971
ORDER / PRODUCTION START|発注・生産開始: February 1971(1971年2月、メキシコ工場へ製造委託)
ROOM|分類: FOOTBALL(フットボール)
TYPE|用途: Football / Soccer Cleat(サッカー/フットボール用クリート)
COLOR|確認できる配色: Black / White(ブラック/ホワイト)
ORIGINAL PRICE|当時価格: $16.95(16.95ドル)
PRODUCTION|製造: Mexico(メキシコの工場へ製造委託)
BRAND BACKGROUND|当時の事業母体: Blue Ribbon Sports(ブルーリボンスポーツ/BRS)
FOUNDERS|創業者: Phil Knight / Bill Bowerman(フィル・ナイト/ビル・バウワーマン)
LOGO DESIGNER|ロゴデザイナー: Carolyn Davidson(キャロライン・デビッドソン)
LOGO DESIGN FEE|ロゴデザイン料: $35(35ドル)
KEY DESIGN ELEMENT|重要意匠: Swoosh(スウッシュ。当時はまだSwooshという名称ではなかった)
HISTORICAL SIGNIFICANCE|歴史的重要性: Nike’s First Shoe / First Shoe to Feature the Swoosh(Nike最初の一足/Swooshを付けた最初のシューズ)
KNOWN PERFORMANCE ISSUE|確認されている問題: Cold-Weather Sole Failure(寒冷環境でのソール硬化・ひび割れが後年の関係者証言で伝えられている)
ORIGINAL UPPER MATERIAL|オリジナルのアッパー素材: 未確認
ORIGINAL OUTSOLE COMPOUND|オリジナルのソール素材: 詳細未確認
MODEL NUMBER|当時品番: 未確認
CATALOG APPEARANCE|当時カタログ掲載: 要追加確認
KNOWN ORIGINAL VARIANTS|確認済み当時バリエーション: 要追加確認
PRODUCTION QUANTITY|生産数: 未確認

RETRO|復刻: The Nike 1971(2021)
RETRO STYLE CODE|復刻版品番: DC9964-010
RETRO COLOR|復刻版表示カラー: Black / Black / Black / White
RETRO COUNTRY OF ORIGIN|復刻版製造国: Italy(イタリア)
RETRO UPPER|復刻版アッパー: Premium Leather(プレミアムレザー)
RETRO OUTSOLE|復刻版アウトソール: Synthetic / Conical Studs(合成素材/円錐形スタッド)
RETRO NOTE|復刻版注記: 上記2021年仕様を1971年オリジナルの仕様として遡及適用しない。

SOURCE STATUS|資料確認状況: CONFIRMED / PARTLY DOCUMENTED(主要史実確認済み/一部詳細は限定資料または未確認)


CURRENTLY CONFIRMED|現在確認できていること

Nike Department of Nike Archivesによって、The Nike、1971年、16.95ドル、1971年2月のメキシコ工場への発注、黒いサッカー用クリートと白いソール、Carolyn Davidsonによるマーク制作、35ドルの請求、最初にSwooshを付けたシューズとしての位置づけを確認できます。

2021年復刻版については、Nike公式商品資料からスタイルコード、カラー、イタリア製、復刻版の素材・アウトソール仕様を確認できます。


CURRENTLY UNCONFIRMED|現在確認できていないこと

現時点のSOLEVAULT調査では、1971年オリジナルThe Nikeについて、以下は一次資料による確定に至っていません。

当時の正式品番/正確な生産数/オリジナルアッパーの完全な素材仕様/ソールコンパウンドの正式名称/全オリジナルカラー/全派生仕様/完全な当時カタログ掲載状況。

また、寒冷地でのソール破損については後年のBob Woodellの証言を引用する資料を確認していますが、今回確認したNike Department of Nike Archivesの2025年Swoosh史には、この具体的な破損経緯は記載されていません。したがって、SOLEVAULTでは公式一次資料で確認した事実とは区別して保存します。


PRIMARY SOURCES|主要資料

中心資料は、Nike自身のDepartment of Nike ArchivesによるSwoosh史です。The Nikeの年代、価格、BRSの状況、メキシコへの発注、Carolyn Davidson、Swoosh誕生までを確認できます。

Nike Department of Nike Archives — The Nike Swoosh Logo History

2021年復刻版についてはNike公式商品アーカイブを使用します。

Nike — The Nike 1971 Firm-Ground Football Boot

SOLEVAULT No.001|再収蔵完了。

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