MENU

009|Nike Flyte Regular(ナイキ フライト レギュラー)|1972

1972|RUNNING / TRACK & FIELD

目次

INTRODUCTION

1972年のNike Flyteは、一種類のシューズではなかった。

今回確認したBlue Ribbon Sports / Nikeカタログは、Flyteについて明確に、

“Comes in three styles.”

と記録している。

その最初に挙げられているのが、Regular White Leather

そして別の1972年BRS広告では、商品名そのものが、

FLYTE-REGULAR

と記載されている。

SOLEVAULTでは、この同時代資料を重視し、Flyteというファミリーを一記事へまとめない。

No.009として収蔵するのは、その基本仕様である、

Nike Flyte Regular。

白いレザーアッパーとガムラバーソールを組み合わせ、トレーニングだけでなく、バスケットボール、ハンドボール、カジュアル用途まで想定された、初期Nikeの異色の一足である。


Flyteは「ランニング専用」ではなかった

現在、1972年のNikeを調べると、Flyteは初期ランニングシューズやトラックシューズとして分類されることが多い。

しかし、1972年BRSカタログをそのまま読むと、もっと広い。

Flyteはall-around useを目的とするシューズとして説明されている。

カタログが挙げる用途には、

Training
Basketball
Handball
Casual Wear

まで含まれている。

つまりFlyte Regularを「1972年のランニングシューズ」とだけ説明すると、当時の商品の性格を狭めてしまう。

SOLEVAULTでは分類上RUNNING / TRACK & FIELDとの関係を残しつつ、TYPEはAll-Around Athletic Shoeとして記録する方が当時資料に近い。


Regular White Leather

1972年カタログが示す基本仕様は、

Regular White Leather

である。

さらに1972年の「A BRAND NEW LINE」広告では、

FLYTE-REGULAR

について、Flyte-Wetと基本的なスタイルを共有しながら、ポリウレタンコーティングを施さないstandard white leather upper仕様として説明している。

ここが重要である。

Flyte RegularとFlyte Wetは、後世のコレクターが色や素材から便宜的に分けた名称ではない。

BRS自身が1972年にFLYTE-REGULARとFLYTE-WETを区別して広告している。

したがってSOLEVAULTでも、この二足を分けて保存する根拠がある。


Leather Upper × Gum Rubber Sole

BRSカタログではFlyteの基本構造として、上質なレザーアッパーをgum rubber soleへ接合した構造が説明されている。

さらに、

all-around foxing
padded ankle cushion
arch support

などが確認できる。

Flyteは単純な白革のフラットシューズではない。

競技使用を考えた足周りの構造を備えながら、用途そのものはかなり広く設定されていた。

この「競技靴なのに一競技へ限定されていない」という性格が、Flyte Regularの面白さである。


Flyte RegularとFlyte Wet

1972年BRS広告は両者の違いを非常に分かりやすく説明している。

Flyte Regularは、

Flyte Wetからpolyurethane coatingを除いた仕様

という趣旨で記載され、standard white leather upperを持つ。

一方Flyte Wetには、表面へポリウレタンコーティングを施した独特の“wet look”が与えられていた。

つまり基本的なシューズ設計を共有しながら、

REGULAR=通常のホワイトレザー
WET=ポリウレタンコーティングによる光沢仕様

という明確な商品上の差があった。

BRSが広告上も別モデルとして番号を振っている以上、SOLEVAULTでは別収蔵する。


そしてSuedeが存在する

さらに今回のカタログによって、Flyte Familyには第三の仕様が明確に確認できた。

Soft Suede。

カタログでは少なくとも、

Saints Gold
Canadian Red

というカラーが確認できる。

したがって1972年Flyteは、

Flyte Regular
Flyte Suede
Flyte Wet

という三つのスタイルを持つ商品ファミリーだったことになる。

これまでNo.009の記事内で「FlyteにはRegular / Wet / Suedeがあった」と説明していたが、SOLEVAULTの収蔵思想では一段足りない。

当時のBRSが分けたものは、SOLEVAULTも分けて残す。


“Wet-Flyte”という名前

Flyte史にはPhil Knight自身の記録も残っている。

Knightは『Shoe Dog』で、初期Nikeの商品名を考えていた時期について、Cortez、Marathon、Obori、Boston、Finlandなどと並んでWet-Flyteという名前を挙げている。

そしてKnight自身、Wet-Flyteという名前をどこから思いついたのか覚えていないという趣旨を書いている。

さらに、最初期のNike商品を見た際、Wet-Flyteは文字どおり濡れているように見え、そのアッパーにはポリウレタンコーティングが施されていたことも回想している。

これはFlyte Wetの存在を、1972年BRS広告・カタログとは別方向から補強する重要な証言である。

ただし、これはNo.009 Regularそのものではなく、Flyte Family成立史として記録する。


1972 Olympic Trials Village

今回のBRSカタログには、Flyteについて非常に興味深い一文がある。

1972年、Oregon州Eugeneで行われたTrack and Field Olympic TrialsのVillageで、Flyteが多く着用されていたという趣旨の記述である。

BRSは、アメリカのトップクラスのトラック選手たちがFlyteを履いていたことを商品訴求に使っている。

ここでも注意する。

これは、

「Flyte Regularが競技本番でトップ選手に使用された」

ことをそのまま証明するものではない。

カタログが述べているのはOlympic Trials Villageでの着用である。

つまり、競技そのものではなく、選手村・大会周辺で履かれるall-around shoeとしての性格を示している可能性がある。

これはむしろFlyteらしい。


初期Nikeの「万能靴」

Cortezには長距離トレーニングという明確な役割があった。

Marathonには軽量レーシング。

Oboriにはロードレーシング。

しかしFlyteは違う。

トレーニング。

バスケットボール。

ハンドボール。

カジュアル。

そしてOlympic Trials Village。

Flyte Regularは、一つの競技へ極端に特化するのではなく、Nikeが1972年に作ったall-around athletic shoeとして見ると理解しやすい。

それは現在のNikeでは珍しくない考え方かもしれない。

しかし、Nikeブランドが始まったばかりの1972年に、すでにこうした商品が存在したことには意味がある。


WHY IT MATTERS|なぜ重要なのか

Flyte Regularが重要なのは、後世に大ヒットしたからではない。

むしろ逆である。

現在ではほとんど忘れられている。

それでも1972年のBRSはFlyteを一種類で終わらせず、

Regular
Suede
Wet

という三つのスタイルへ展開した。

しかもFlyte Regularはランニング専用ではなく、複数のスポーツと日常使用まで想定されていた。

これは、Nikeが誕生直後からすでに、

同じ基本設計を素材・表面処理・用途感によって展開する

という商品づくりを行っていた証拠でもある。


SOLEVAULT VIEW

後世から1972年を見ると、NikeはCortezとWaffleから始まったブランドのように見える。

しかし、当時のカタログを一ページずつめくると、それだけではないことが分かる。

白いレザーのRegular。

スエードのGoldとRed。

濡れたように光るWet。

Nikeはブランドが始まったその年から、すでに一つのシューズを複数の表情へ展開していた。

Flyteは短命だった。

だから忘れられた。

しかし、

短命だったことと、重要でなかったことは同じではない。

1972年にBRSが三つのスタイルを用意して売っていた。

それだけで、この一足を残す理由になる。


ARCHIVE DATA|アーカイブデータ

MODEL|モデル名: Nike Flyte Regular/ナイキ フライト レギュラー
FAMILY|ファミリー: Nike Flyte
PERIOD DESIGNATION|当時の商品表記: FLYTE-REGULAR / Regular White Leather
YEAR|登場年: 1972
ROOM|分類: RUNNING / TRACK & FIELD
TYPE|用途: All-Around Athletic Shoe/多用途アスレチックシューズ
INTENDED USE|想定用途: Training, Basketball, Handball, Casual Wear
UPPER|アッパー: Standard White Leather/ホワイトレザー
COATING|表面処理: Polyurethane Wet-Look Coatingなし
OUTSOLE|アウトソール: Gum Rubber Sole/ガムラバーソール
FOXING|フォクシング: All-Around Foxing/全周フォクシング
ANKLE|足首部: Padded Ankle Cushion/パッド入りアンクルクッション
ARCH SUPPORT|アーチ支持: Arch Support/アーチサポート
CONFIRMED FAMILY STYLES|確認済みファミリー仕様: Regular / Suede / Wet
KEY EVENT|関連イベント: 1972 U.S. Track & Field Olympic Trials Village, Eugene
MODEL NUMBER|品番: 未確認
COUNTRY OF MANUFACTURE|製造国: 初期Flyteの日本製資料あり。1972 Regularの個体単位確認は継続
FACTORY|製造工場: 未確認
ORIGINAL PRICE|当時価格: 未確認
PRODUCTION QUANTITY|生産数: 未確認
SOURCE STATUS|資料確認状況: CONFIRMED / DOCUMENTED
IMAGE STATUS|画像資料: 1972 BRS/Nikeカタログおよび1972年BRS広告で確認


CURRENTLY CONFIRMED|現在確認できていること

1972年BRS/NikeカタログはFlyteについて**“Comes in three styles”**とし、Regular White Leather、Soft Suede、Wet Lookの三仕様を記録している。

1972年BRS「A BRAND NEW LINE」広告では、FLYTE-REGULARFLYTE-WETが別の商品として掲載され、RegularはWetからポリウレタンコーティングを除いたstandard white leather upper仕様として説明されている。

同カタログではFlyteをall-around useのシューズとして位置づけ、training、basketball、handball、casual wearなどの用途を挙げている。


CURRENTLY UNCONFIRMED|現在未確認のこと

Flyte Regularの正確な商品番号、当時価格、製造工場、総生産数は未確認。

また、Regular / Suede / Wetが完全に別の商品番号を持っていたかについては、RegularとWetの広告上の独立性は確認できるものの、全三仕様について商品番号資料との照合を継続する。

1972 Olympic Trials VillageでFlyteを着用した個々の選手名、着用したFlyteの具体的仕様についても未確認である。


SOURCES|資料

Blue Ribbon Sports / Nike Product Catalog, 1972 — FLYTE, T-F 3
SOLEVAULT確認資料。三つのスタイル、基本構造、用途、Olympic Trials Villageに関する記述を確認。

Blue Ribbon Sports / Nike — “A BRAND NEW LINE”, 1972
FLYTE-REGULAR / FLYTE-WETを独立して掲載。Regular White LeatherとWet polyurethane coatingの違いを確認。

Phil Knight — Shoe Dog
Wet-Flyteの名称、初期Nike商品群、ポリウレタンコーティングされたWet-Flyteについての同時代当事者回想。


009はこれで「Nike Flyte」から「Nike Flyte Regular」へ正式変更するのがいいです。

そしてこの結果、Flyte SuedeとFlyte Wetは未収蔵の独立候補として台帳へ残します。ここで無理に010以降をずらす必要はありません。既存の通し番号は資料発見の歴史でもあるので、後から発見したモデルには後続番号を与えればいい。

次の010 Bangkokはかなり重要です。 今回のカタログにRoad Runner Suedeが独立掲載されたことで、以前の「Bangkok=Road Runnerのスエード版」という説をそのまま採用できなくなりました。ここも作り直す価値があります。

flyteは種類がいろいろある?

はい。Flyteは「1モデル1仕様」ではありません。 今回の1972年BRS/Nikeカタログだけでも、BRS自身が “Comes in three styles” として3種類を明確に示しています。

  1. Flyte Regular — White Leather。通常の白レザー仕様。
  2. Flyte Suede — Soft Suede。少なくとも Saints Gold / Canadian Red を確認。
  3. Flyte Wet — レザー表面にpolyurethane coatingを施した、濡れたような光沢のある Wet Look 仕様。

さらに重要なのが、別の1972年広告では FLYTE-REGULARFLYTE-WET が別々の商品として掲載されていることです。つまり「後世の色違い呼称」ではなく、当時のBRS自身がFlyteを複数仕様に分けて販売していたことが確認できます。

なので、SOLEVAULTなら私は3足に分ける方向です。

No.009|Nike Flyte Regular|1972をまず収蔵し、Nike Flyte Suede|1972Nike Flyte Wet|1972も独立収蔵候補にする。Saints GoldとCanadian Redについては、現状ではSuedeのカラー違いとして同じ記事内に入れるのが自然です。

そして、もう一段掘る価値があります。Flyte Regular / Suede / Wet以外のFlyteが1972〜74年に存在しなかったかを調べてから、「Flyteは全部で3種類」と確定した方がいいです。

Cortezと同じです。カタログで3種類見つかった=3種類しか存在しない、とはまだ言わない。

te Wetを1972年初期モデルとして確認する補助資料。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次